摩擦試験の結果が「思ったより高い」「再現性が取れない」という場合、測定子(対試験片を押し当てる接触子)の選択が適切でないことが原因の一つとして挙げられます。
同じ試験機・同じ荷重・同じ速度でも、接触形状が変わるだけで測定値は大きく変動します。本コラムでは、トライボギアで使用できる主な測定治具・測定子の種類と、用途ごとの選び方を解説します。
接触形状は「点・線・面」の3種類
摩擦試験における接触の基本形状は、点・線・面の3種類です。それぞれの特徴を理解することが、適切な治具選択の第一歩です。



| 接触形状 | 主な治具 | 向いている試験 |
|---|---|---|
| 点接触 | ボール圧子、引掻針 | 塗膜・コーティングの引っかき、局所摩耗 |
| 線接触 | ローラー治具 | フィルム・紙の搬送性評価、線圧での摩擦評価 |
| 面接触 | ASTM平面圧子、30mm平面圧子 | 包装材・シートの摩擦係数(JIS/ASTM準拠) |
代表的な測定治具と用途
ボール圧子


平板またはシート状の試験片に、固定されたボールで点圧を加えながら摺動します。ボールを基準として試験片間の差異を定量評価するのに適しており、塗膜・ハードコートの傷つきやすさ比較によく使われます。材質はアルミナ・SUJ2・SUS304・超硬から選択可能で、試験条件に合わせた使い分けができます。
ローラー治具

固定されたロールで線圧を加えながら滑らせます。点接触より接触面積が広く、紙・フィルムの搬送性評価や、コーティング表面の耐摩耗性評価に適しています。
ASTM平面圧子 / 30mm平面圧子


シート状試験片を巻き付けて固定し、面圧をかけて評価します。JIS K 7125(プラスチックフィルムの摩擦係数)やASTM D 1894(プラスチックフィルム・シートの静動摩擦係数)など、規格試験で指定される代表的な治具です。
引掻針

細い針状の圧子で試験片表面を引っかきます。JIS K 5600-5-5(塗膜の引っかき抵抗性・荷重針法)やJIS K 7317:2022(機能性フィルムの引っかき硬さ)に準拠した試験に使用します。
「評価したいこと」から治具を逆引きする
治具選択に迷う場合は、規格名が決まっているか、そうでないかで分けて考えるのが早道です。
規格名がある場合
規格内で使用する接触子の形状・材質が指定されているケースがほとんどです。規格番号をお知らせいただければ、対応する治具をご案内できます。
規格が決まっていない場合(材料評価・開発試験)
「引っかきに強い塗膜を選びたい」「フィルムの搬送性を比較したい」など、目的から逆算します。比較評価が目的であれば治具の形状・材質を固定し、試験片間の差だけを見る設計が再現性を高めます。
特殊用途向けの治具も
標準的な接触形状以外にも、特殊な試験ニーズに対応した治具を用意しています。




- 人工皮革ホルダー:R50mm(人の親指を模した形状)で人工皮革を固定。繊維・衣料・化粧品分野での皮膚接触摩擦評価に使用します。
- タック性ロールユニット:ステンレスロールの転がり抵抗で粘着材・床材・化粧品のべた付きを定量評価します。
- スチールウールホルダー:スチールウール・ガーゼ・ゴムなどを固定し、繰り返し摩耗による表面変化を評価します。
- 45°鉛筆ホルダー:JIS規格準拠の鉛筆硬度試験用。塗膜・コーティングの硬さ評価に。
まとめ
「測定子を変えたら値が変わった」は、機器の問題ではなく接触条件の違いです。測定目的を明確にし、試験規格や評価対象に合った治具を選ぶことが、再現性の高い結果への近道です。
各治具の外観・取り付け方は測定治具・測定子一覧ページ(動画あり)でご確認ください。治具の選定に迷われた場合は、お気軽にお問い合わせください。