摩擦係数とは?静止摩擦係数と動摩擦係数の違い

摩擦係数とは、接触面に垂直に作用する垂直抗力に乗じる係数のことです。摩擦係数は物体の摩擦力を説明するために重要な係数で、大きく静止摩擦係数、動摩擦係数に分けられます。

この記事では、摩擦係数の成り立ちと一般法則について解説していきます。

摩擦力を説明するクーロンの法則

摩擦力は、15世紀にレオナルド・ダ・ヴィンチによって初めて定量化され、摩擦力には以下の特徴があることが経験的に明らかになりました。

1.摩擦力は垂直荷重に比例する

2.摩擦力は見掛けの面積によらない

その後、18世紀になるとフランスのC.A.クーロン(1736~1806年)によってより詳しく研究が進みました。「摩擦力Fは垂直荷重Wに比例する」という内容を数式で表すと以下の数式になります。

F=μW

この数式において、比例定数μのことを摩擦係数と呼びます。

さらに、摩擦係数には静止摩擦係数μsと動摩擦係数μkがあるとして、

3.最大静摩擦力μkは動摩擦力μsよりも大きい

4.動摩擦力μsは速度によらず一定である

という法則を導くことにも成功しました。

これをクーロンの法則と言います。

静止摩擦係数と動摩擦係数の違い

静止摩擦係数とは、物体が止まっている状態のときの摩擦係数で、物体を静止した状態から動かすときにかかる摩擦力を説明するときに使われます。

動摩擦係数とは、物体が動き出した後の摩擦係数のことで、動いている物体にかかる摩擦力を説明するときに使われます。

先ほどのクーロンの法則によると、「最大静止摩擦力は動摩擦力よりも大きい」、すなわち静止摩擦係数は、動摩擦係数よりも大きくなります。

μs > μk

このことは、止まっている物体を動かすときよりも、動いている物体を動かすときの方が、摩擦力が小さいことを意味します。

同じくクーロンの法則では、「動摩擦力は速度によらず一定である」としていて、物体を速く動かしても、ゆっくり動かしても動摩擦係数は変わらないことになります。

見掛けの接触面積と真実の接触面積

クーロンの法則で、「摩擦力は見掛けの面積によらない」とされているとおり、物体の面積が大きくなっても、荷重が同じである限り摩擦力は変わりません。

ここで、「見掛けの面積」と強調されている理由は、摩擦力は「見掛けの面積」ではなく、「真実の接触面積」に比例するからです。そして、「真実の接触面積」は、接触面にかかる荷重に比例します。

このことは、ドイツのホルムによって、軟鋼をサンプルにした実験で証明されました。ホルムは、軟鋼の荷重が2Kgから500Kgまで250倍に増えると、「真実の接触面積」は0.02平方ミリメートルが250倍の5平方ミリメートルまで増加することを示したのです。

摩擦係数の測定方法と注意点

摩擦摩耗試験を実施する目的の1つに摩擦係数の測定が挙げられます。摩擦係数は、他の物理定数と異なり、材料固有の値ではなく摩擦条件によって異なるものです。

したがって、摩擦係数を再現性高く計測するには、条件を同一にして試験を実施する必要があり、試験機にも高い精度が求められます。

静止摩擦係数の測定方法と注意点

静止摩擦係数の測定には、傾斜法、直線移動式のほか、ポータブル摩擦計による測定など、いくつかの測定方法があります。

例えば、HEIDONのTYPE10(写真)は、傾斜法によって静止摩擦係数を測定できます。

TYPE:10

これは、下図から導かれる正接(tanθ)を求めることによって、静止摩擦係数μsを求めることができます。

静止摩擦係数は、測定の非常にばらつきが大きくなることが一般的です。実際にある実験をしたところ、静止摩擦係数のばらつきを示す標準偏差の値が、動摩擦係数と比較して一桁大きくなっていることがありました。

したがって、静止摩擦係数の測定時は、以下のことに注意して絶対値よりは傾向としての差を確認できるようにまとめていきます。

  • 測定回数を増やす
  • 同一場所で何回測定するかを決める
  • データの最大値と最小値を除外する

動摩擦係数の測定方法と注意点

動摩擦係数は、物体間の相対滑りを等速で行うことによって測定します。動摩擦係数は、ある時間間隔(距離間隔)の摩擦係数の平均値で求めるため、摩擦係数の変動があっても、平均値計算時にその変動は排除されやすい傾向があります。そのため、静止摩擦係数に比較してばらつきが小さくなります。

経験上、動摩擦係数は5回程度測定し、平均値で比較すれば十分に試料間の比較ができることがわかっています。動摩擦係数は同じであっても標準偏差σの違いによって、実際の滑り特性には違いがあることに注意が必要です。一般的には、動摩擦係数と標準偏差の両方が小さい試料ほど滑り易い試料と考えることができます。

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