滑り摩擦力とは?測定方法や試験機について解説

滑り摩擦とは、回転をともなわないで互いに移動したときに生じる摩擦のことです。回転しながら移動したときに生じる「ころがり摩擦」とは異なる摩擦の種類として用いられています。滑り摩擦は物体の滑り特性を把握する上で重要な要素の1つです。
今回は滑り摩擦力について、測定方法や試験機について詳細に解説していきます。
※「滑り力」と表現される方もいますが、実際には「滑り摩擦力」が正しい表現です。

滑り摩擦力とは?

滑り摩擦を表すときの代表的な特性が滑り摩擦力です。滑り摩擦力とは、滑り摩擦を起こした物体に働く抵抗力のことです。滑り摩擦力Fは摩擦係数μと物体の垂直荷重Wを使って以下のように表現できます。

  • F=μW

つまり滑り摩擦力の大きさは、摩擦係数と物体の垂直荷重に比例して大きくなることを表しています。言い換えると、摩擦係数が大きい物体ほど滑りにくく、摩擦係数が小さい物体ほど滑りやすいのです。

摩擦係数には静止摩擦係数μsと動摩擦係数μkがあり、μs > μkという関係が成り立ちます。

たとえば、ある物体を斜面に置いたときに、物体にかかる重力よりも静止摩擦力F(=μsW)が大きければ、物体は斜面を滑らずに止まったままとなり、重力が静止摩擦力Fよりも大きくなれば滑り出します。一旦滑り出すと、物体にかかる重力が動摩擦力F(=μkW)よりも大きい限りは斜面を滑り続けるのです。。

滑り摩擦力の測定方法は?試験機は?

ここからは、滑り摩擦力の測定方法と測定できる試験機について紹介していきます。

TYPE:10


TYPE:10は、静止摩擦係数測定機です。TYPE:10を使うことで、下図から導かれる正接(tanθ)を求められるので、静止摩擦係数μsを測定できます。

静止摩擦係数は、測定のばらつきが非常に大きくなることが一般的です。実際にある実験をしたところ、静止摩擦係数のばらつきを示す標準偏差の値が、動摩擦係数と比較して一桁大きくなっていることがありました。
したがって、静止摩擦係数の測定時は、以下のことに注意して絶対値よりは傾向としての差を確認できるようにまとめていきます。

• 測定回数を増やす
• 同一場所で何回測定するかを決める
• データの最大値と最小値を除外する

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TYPE:94i-II

TYPE:94i-IIは、ハンディタイプの摩擦測定機で、静摩擦係数の測定が可能です。測定条件がかなり限定される装置ではありますが、ハンディタイプで持ち運びが便利な上に、価格も安いため手軽に導入するのに適しています。自重で相手材に接触しているΦ26mmのスライダー(40g)をボイスコイルモータ(VCM)で真横から押し動き始める力を計算して、静摩擦係数μsを算出します。

床や路面の滑りやすさの評価、紙やフィルムの滑りやすさの評価、食材の滑り評価などで利用実績のある測定機です。

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TYPE:38

TYPE:38は、高性能で低価格な摩擦摩耗試験機です。安価でありながら、タッチパネルでの操作や多彩な測定範囲など上位機種にも負けない基本性能を誇っています。測定子ホルダ一体型の荷重変換器を採用しているので、オペレーションも容易です。トライボソフト(オプション)で、静摩擦係数測定から往復摩耗測定まで、簡単に測定、解析、管理が可能です。トライボソフトでは、標準偏差の解析項目があり、動摩擦係数が同じであっても標準偏差σの違いで、実際の滑り特性の違いを定量化できるようになっています。

TYPE:38の主な実績として挙げられるのが、自動車部品の滑り摩擦力評価です。たとえば、ワイパーとフロントガラスの滑り測定や、ガラスランと窓ガラスの滑り測定などで用いられています。

また、建築資材分野では、フローリングや風呂場のタイル等の滑り判定にもTYPE:38が用いられていて、たとえば床材と人間の摩擦測定を想定した「JISA1509-12」に準拠した試験にも活用されています。

医療分野ではカテーテルの滑り試験にもTYPE:38を利用可能です。

TYPE:38の詳細はこちら

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HEIDONが品揃えしている多種多様な摩擦摩耗試験機を利用すれば、お客様のニーズに合わせた滑り摩擦力の測定が可能になります。実際にHEIDONでは、自動車業界、建築業界、医療業界を始めとして幅広い業界で滑り摩擦力の測定実績があります。
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受託試験であれば、必要なタイミングで必要な時間だけ試験機を利用できるので、試験機の導入にハードルを感じている方でも安心です。

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